リンパ浮腫はこれまで治療不可能とされてきました。しかし、ここ10年間の飛躍的な進歩により、治療の糸口が見えてきました。現段階の治療に於いて、最も重要な点は、保存治療が「標準治療」であり、我々が実施している「外科治療」は補助的な治療であることを理解することです。
これまでに解明されてきたことは、リンパ機能を事前に評価することで、患者さんの病気の状態に即した「最善の治療法」を提供できることです。
検査結果によっては、現段階での医療レベルでは治療が難しい場合もありますが、我々を含め、世界中の医師が治療法の開発に心血を注いでいますので、5年後、10年後、20年後に新たな治療法が生まれてくる可能性を考慮し、諦めずに治療を継続して下さい。
超音波エコー装置を用いることで、リンパ管の状態(リンパ管硬化)を無侵襲に診断できるようになりました。
この技術開発により、これまでリンパ管静脈吻合手術を10箇所で実施する治療効果と、3箇所で実施する治療効果が同じ程度となりました。手術に於いて術前に吻合に適する静脈と、集合リンパ管を同定することができます。具体的には創が1/3箇所,手術時間が1/3の長さ、体への侵襲が1/3となります。病態や患者さんの状態によって治療効果は異なるため、手術を受ける際には担当医にご確認下さい。これまで複数回の手術を実施していたリンパ管静脈吻合術ですが、本技術の開発により、より確実で、低侵襲な治療に進歩しております。我々は2016年から2017年に300時間ほどかけて、本技術を開発してきました。
我々のチームにてリンパ管静脈吻合術を受けられる全ての患者さんに対し、30分から60分ほどかけて本検査を術前に実施します。少しでも多くの医療者に本技術を普及し、多くの患者さん達の悩みが解決できればと考え、これからも積極的に論文発表・学会発表・研修会を開催していきます。
【本技術に関する学会発表】
リンパ管硬化の超音波エコー装置による診断に関して、日本脈管学会総会にて発表を予定しています。
世界で初めての発表となります。興味のある医療者の方々はぜひ参加してみて下さい。
下半身麻酔または、全身麻酔で実施する手術です。比較的侵襲度が高いので、主治医としっかりと相談の上、治療を決定して下さい。リンパ機能が廃絶している患者さんに適しています。
治療詳細に関しては、こちら
全身麻酔で実施する手術です。こちらも比較的侵襲度が高いので、主治医としっかりと相談の上、治療を決定して下さい。リンパ節を採取する部位にリンパ浮腫が発生する可能性があるので、慎重にご検討下さい。現在では、多くの対策が講じられています。
治療詳細に関しては、こちら
リンパ管静脈吻合術の効果と医学的検証 Dr.三原 誠
(参考文献)
1) Multi-site Lymphaticovenular Bypass using supermicrosurgery technique for Lymphedema Management in lower lymphedema cases
Mihara M, Hara H, et al. Plast Reconstr Surg. 2016 July.
アメリカ形成外科雑誌に報告したLVAの治療効果
2) Lymphaticovenular anastomosis to prevent cellulitis associated with lymphoedema.
Mihara M, Hara H, et al. Br J Surg. 2014 Oct;101(11):1391-6.
イギリス外科学会誌に報告したLVAの蜂窩織炎抑制効果。
3) Combined conservative treatment and lymphatic venous anastomosis for severe lower limb lymphedema with recurrent cellulitis.
Mihara M, Hara H. et al. Ann Vasc Surg. 2015 Aug;29(6):1318.e11-5.
血管外科関連の国際雑誌に報告した、保存療法と外科治療の融合
[リンパ管静脈吻合術の痛み・違和感に対する効果]
・痛み・違和感で悩んでいた患者さんの内、94.3%の患者さんに治療効果を認める。
[リンパ管静脈吻合術の周径縮小効果]
・50%の患者さんで改善。
[リンパ管静脈吻合術の蜂窩織炎に対する予防効果]
・術後に約1/7程度に蜂窩織炎の発生する確率が低下します。
・蜂窩織炎に悩む92%の患者さんに治療効果を認めます。